二度とない人生を⑫

人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に―
この言葉は、森先生の語録のうちでも比較的に人口に膾炙され、数多く引用されるコトバです。というには、もっと早い時期にこの人に出逢っておったら、私の人生も少しは今よりましになり得たであろうという取り返しのつかない嘆きをみな一応に抱きやすものですが、そうした後悔を持つ人への痛烈な一撃のコトバです。全ての出逢いは、機縁の到来と、その把握のいかんによるものです。縁を縁とも知らず見すごす人を下品とすれば、縁を縁と知りつつ生かし得ない中品があり、袖ふりあう縁も活かし得る人もあって、これを上品の人と申せましょう。
しかし思えば、これも、自己の力量いかんというだけでなく、その背後に、天意の営みがあるというのが、真実に近いと言えます。坂村真民先生の有名なコトバに、「めぐりあいのふしぎに、てをあわせよう」とありますが、味わいの尽きないものがあります。
この言葉は、まさに実感として感じることがあります。 最初から否定的に接するわけにはいきませんが、やはり縁のある人としかつながらないという事実もあります。 異業種交流会など、自分から縁をつかみに行くことは大切なことですが、その中で本当の意味で「縁」と呼べるつながりが生まれるのは、ほんのわずかだと感じます。
だからこそ、そのわずかな縁を大事にしていきたい。 すべての人とつながる必要はなく、無理に広げるよりも、深く関わることの方が大切なのだと思います。 できることをし、できないことはしない。 その中で自然に残っていく縁こそが、本当に意味のある出会いなのかもしれません。
人生は二度なし。 時間は有限です。 だからこそ、一つひとつの出会いを軽んじず、その瞬間を大切にしていきたいと思います。
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