二度とない人生を⑲

幸福とは、縁のある人々との人間関係を噛みしめて、それを深く味わう所に生ずる感謝の念に他なるまい。
この語録は、先生の「幸福論」の一つの結論とも言うべきものです。幸福感の三大条件は、まず自己の「身心関係」で、一応健常な肉体と精神に恵まれているならば、幸せとして感受すべきでありましょう。たとえ身障者であっても、健常者以上に、幸せを満喫している数多くの人達がおられます。第二に「人間関係」での幸福感で、これに関しては本項は適切に簡潔に説いて下さっているので、説明の要はないほどです。先生はつねづね、人やものやことを噛みしめて味わうことの大切さを力説されました。そして世評や人気に左右されず、自分の感覚や嗅覚で噛みしめ匂いを嗅ぎわけるように説かれました。第三には「仕事関係」の喜びです。仕事の大小を問わず、成し遂げた喜び、とりわけ一区切りとして一日の仕事を予定通り完了した喜びについては、この世の極楽です。とまで仰せで”仕事人間の面目躍如”とも申せましょう。
この時期になると、忘年会など人と会う機会が増えてきます。 人間関係のつながりを改めて感じる季節でもあります。 せっかく多くの人に会うのですから、できるだけ人とのご縁を噛みしめ、その中に幸福感を味わいたいと思います。
仕事に関しても、年末という節目に向けて忙しく働いている今こそ、その充実をしっかりと感じたいものです。 一日の仕事をやり遂げた後の静かな満足感――それは、先生の言われる「この世の極楽」に通じるものかもしれません。
そして何より、体のこと。 年齢を重ねるにつれて、昔のようにはいかなくなってきました。 少しずつ体に変化を感じるようになり、食事や運動にも気をつけねばと思います。 人との関係を広げながら、健康も大切にする――このバランスこそ、今の自分にとっての課題であり、幸福の形なのかもしれません。
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