第三十二夜 万物は陰陽結び合わせて相続する

この世にある万物は、陰と陽の片方だけでは、あと継ぎをつくっていくことはできない。
父母がなくとも子どもができるのは草木だけなんだよ。草木というのは、空中に半分幹や枝を出し、地中に半分根をはって育ってる。地を離れて相続するもんは男女を二つ結び合わせるのが筋道だ。
つまり網目のようなもんで、網というのは糸二筋を寄せては結び、寄り合わせては結んで網となっていく。人の道も同様に男と女を結び合わせて想像するもんなんだ。
人間ばかりではなく動物もみんなそうだ。地を離れて相続するものは、一粒の種が二つに割れ、その中から芽が出る。一粒のうちに陰陽男女があるようだ。それが天の火気を受け、地の水気を得て地に根をはり、空に枝葉をのばし、育っていくんだ。つまり天地を父母とするんだな。
世間の者は、草木が地中に根を出し、空中に枝葉を繁らせて育つことは知っているが、空中に枝葉をのばして、土中の根を育ててることを知らないようだ。空中に枝葉をのばすことも、土中に根を張ることも、道理は一つじゃないか。そうだろう。(一五八)
万物は、陰陽ふたつが結び合うことで相続し、命をつないでいく。片方だけでは、未来を生むことはできない。
草木でさえ、空に枝葉を広げると同時に、地中に根を張ることで育つ。目に見える「枝葉」にばかり目が向きがちだが、実は「根」こそが、すべての基を支えている。表に見える成果の背後には、目に見えない土中の働きがあるのだ。
人の道もまた同じだ。家族、組織、社会——どれも関係性によって成り立ち、その結びつきの中で生まれ、育ち、継がれていく。
枝を育てたければ、根に心を向けること。見えるものと見えないもの、表と裏、陰と陽。そのどちらにも等しく目を配る姿勢が、道を踏み外さぬために必要なのだと思う。
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