第三十六夜 大学は二網領

学者はみな『大学』は三網領というけれど、前にも話したように、(第三十五夜)、至善に止まるの「至善」というものがどんなものか明らかでないのだから、実は二網領とすべきではないか、と考えたんだ。
なぜなか三網領として、「明徳を明らかにするは道徳の至極なり」(立派な徳を発揮することが最高の道徳である)、また「民を新たにするは国家経綸の至極なり」(民風を一新することが最上の統治策である)、そのうえに「至善に止まる」というのだが、明徳と新民とのほかに、至善に該当するものはありえない、と思うからだよ。
だから三網領というのが、その実、二網領と心得ていいんだ。(続四六)
『大学』の三綱領──「明徳を明らかにする」「民を新たにする」「至善に止まる」は、儒学の基本とされている。けれども二宮翁は、この「至善に止まる」が実際には独立した目的ではなく、他の二つに内包されているのではないかと疑問を投げかけている。
つまり、「明徳を明らかにする」ことと「民を新たにする」ことの先に、「至善に至る」という結果が自然に現れるのではないかということだ。そう考えると、至善は目的ではなく、徳と民政が結びついた先に浮かび上がる「状態」である。
この指摘から学べるのは、言葉の響きや形式に惑わされず、その中身を吟味する姿勢の大切さである。経典の教えであっても、ただありがたがるのではなく、自分の頭で再構成し、現実に活かすところに、真の学びがあるのだろう。
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