第二十四夜 荒れ地は荒れ地の力によって開く

あるときワシは「豊臣秀吉の陣法に、敵をもって敵を防ぎ、敵をもって敵を打つ、という計略があったというが、実に良策だな。水害の防止にも、水をもって水を防ぐ、という方法があるんだ。心得ておかなければなんことだよ」と話したんだ。
すると町田亙が、「近ごろ富士川に雁がね堤というのができましたが、いまおっしゃった方法で造成したものなんでしょうね」と言った。
そこでワシはこう話してやったんだ。
「それが事実ならば、築いた者は、よく水を治める法を心得た者だな。ワシのやり方もまた同じじや。荒れ地は荒れ地の力で開拓し、借金は借金の費用で返済し、金を積むには金の力でつませるんだよ。
いろいろな教えというのも同様で、たとえば仏教で、この世はわずかな間の仮の宿で、来世こそ大切なんだと教えているが、これもまた、欲をもって欲を制するやり方なのさ。あの世ことは目に見えんので、皆、想像して説いていることなんだが、しかし草木を見ると、ほぼ、見えてくるのさ。
たとえば今ここに一本の草があるとしよう。この草に向かって説法するとすれば、
『おまえは今、草と生まれて、露を吸い、肥やしを吸って喜んでいるが、これはみんな迷いというものなんだよ。春風にさそわれて生まれでたもので、この世を実は仮の宿なんだ。明朝にも秋風が吹いてくれば花も散り、葉も枯れるんだ。雨風の苦しみをしのいで生長してきたのが、みなムダになってしまう。この秋風を無常の風というが、恐ろしいこった。早く、この世は仮の宿だと悟って、一日も早く身を結び、種になって、火事でも焼けない土蔵の中に入って安心しなさいよ。この世で露を吸ったり、肥しを吸ったり、葉を出し花を開いたりするのは、みんな迷いなんだよ。早く種になって草の世を捨てることだな。種となって行く来世というところには、いろいろな計り知れないほどの楽しみが待っているんだよ。』
と説くようなもんだ。
これはつまり、欲を制することのむずかしのを知って、勧善懲悪の教えの形をとって、欲をもって欲を制するようにしたんだ。
これを末世の坊主どもは米や金を集める手段として、この説法を使っている。悲しいことじゃないか」。(五四)
「敵をもって敵を制す」。これは秀吉の戦術として伝わる言葉だが、経済や自然の理にも通じるものがある。洪水を水で防ぐように、借金は借金の費用で返し、荒地は荒地の力で拓く。つまり、状況そのものを味方に転じて対処する知恵だ。
同じように、仏教の教えもまた、「欲をもって欲を制する」方法であるという指摘は鋭い。欲望を否定するのではなく、より大きな“来世の安楽”という想像上の欲を掲げて、現世の迷いから離れるよう導いていく。
このような構造は、教育や組織づくりにも通じる。誰かを動かすとき、真っ向から否定や抑圧で臨むのではなく、すでにある力や関心を活かして導くほうが自然で、効果も持続する。
本質を見抜き、理を活かして動かす――そんな知恵が、日々の判断にも求められているように思う。
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これは利用できそうなことが書いてありそうです。
より時間効率を上げるために学ぶ必要があります。
今日もはここまでです。
ありがとうございます。
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