二度とない人生を⑪
一日不読 一日不喰
書物は人間の心の養分。読書の一面からは、心の奧の院であると共に、また実践へのスタートラインでもある。
森先生のモットーとされたところは「行余学文」です。これは論語の学而篇にある「行いて余力あれば則ち以て文を学ぶ」の言葉に由来するもので、実践履行の第一義として、読書学文を第二義に置くというのが、生き方の根本方針であります。しかしその一方、森先生ほど読書の重要性を認識し、熱意をもって説かれた人も少ないのではないかと思われるほど、先生は読書人出ない人に、読書の意義と楽しみを終始倦むことなく説かれました。
しかもその読書の要諦の第一は本の選び方にありとしてその根本を押えておられます。しかもその本がベストセラーのいかんによって選ぶのではなく、あくまで自分の咀嚼力によって選ぶべきであるというところに、先生の限りなき慈愛の発露が感じられます。
そうでした。本を読むことの重要性を、改めて心に刻まなければなりません。 いつの間にか、本を「ちゃんと読む」ということが少なくなっていたように思います。
二宮尊徳先生の『夜話』も途中で頓挫してしまいましたが、私の場合はやはり森信三先生の本、そしてその教えを伝えてくださる寺田一清先生の解説の方が、より深く心に響くようです。 最初は難しく感じて咀嚼できなかった内容も、繰り返し読むうちに少しずつ理解できてくる。 その過程に、学ぶ喜びと味わいがあります。
森先生の本は、単なる知識の集積ではなく、読むたびに心を整え、生き方を正してくれるような不思議な力を感じます。 難解であっても、心の奥に何かが残る――それが森先生の本の魅力です。 また少しずつ読み進めて、自分の中に静かに沈殿させていきたいと思います。
#心魂にひびく言葉 #森信三 #寺田一清