第二十六夜 輪廻盛衰は父富み子貧し
訪れてきた者に、ワシが「誰それの家は無事にやっているかね」とたずねたら、その者が言うに、「あの人の父親は家業に精を出し、村でも一番の働き者だったんで、儲けも多く、豊かな暮らしぶりだったが、その子は、と ・・・
訪れてきた者に、ワシが「誰それの家は無事にやっているかね」とたずねたら、その者が言うに、「あの人の父親は家業に精を出し、村でも一番の働き者だったんで、儲けも多く、豊かな暮らしぶりだったが、その子は、と ・・・
貧乏になったり、金持ちになったりするのは偶然のことではないんだ。 金持ちも金持ちになる原因があり、貧乏も貧乏になる原因というものがあるんだな。人々は財貨というものは自然に富者のところに集まるものだと ・・・
あるときワシは「豊臣秀吉の陣法に、敵をもって敵を防ぎ、敵をもって敵を打つ、という計略があったというが、実に良策だな。水害の防止にも、水をもって水を防ぐ、という方法があるんだ。心得ておかなければなんこと ・・・
仏の教えというのは深い面白味がるな。 いま身近なたとえ話してみれば、豆の前世は草なんだ。草の前世は豆だよというようなもんだ。 だから豆粒に向かっては、お前もと草に化身だぞ。うそだと思うなら、お前の ・・・
世の中は陰々と陰が二つ重なっても、陽々と二つ重なってもよくない。陰陽、陰陽と並ぶ行われるのがきまった法則だ。 例えば、寒暑、昼夜、水火、男女があるようなもんだ。人の歩き方も右一歩左一歩、尺取虫も屈 ・・・
冬になると山や谷に雪が降り、辺りは凍りつくが、春ともなり柳の一芽が開き始めることになれば、その雪も氷もとけてくるもんだ。また秋になって、桐の一葉が落ちるようになると、天下の青葉もまた、それまで終わる ・・・
この世では、咲いた花は必ず散り、散っても、来る春にはまた必ず花が咲く。春に生えた草は秋風が吹くと枯れる。枯れてもまた春風にあえば必ず生えてくる。 万物みなそうだ。だから無常といっても無常ではなく、有 ・・・
天道は自然そのものだ。 人道は天道にしたがうけれども、人がこしらえるものさのさ。人道を尽くして、あとは天道に任せるんだ。人道をよく尽くさないのに天道を恨んだりしちゃけんぞ。 庭の落ち葉、天道で、 ・・・
大和田山城(茨城県青木村の神主)が楠氏の旗の文句だといって次の文字を写してきて、その真偽をたずねた。 【楠公旗文】 非 は理に勝つことあたわず 理 は法に勝つことあたわず 法 は権に勝つことあたわず ・・・
山の畑に粟や稗が実る頃になると、猪、鹿、小鳥たちが出てきて食べる。そこには礼も法も、仁義もなくて、ただ自分自身の腹を養うだぇなんだ。粟を育てようと肥をやる猪も鹿もなく、稗を実らせようと草を取る鳥もい ・・・