第四十八夜 神・儒・仏の正味一粒丸

Release: 2025/07/08 Update: 2025/07/08

 ワシが長い間考えてきたことだが、神道は何を道とし、どこが足りない点か、儒教は何を教えとし、何が長所で何が短所か、仏教は何を教えのもととし、その長所、短所はどこか、と比較してみたが、それぞれ短所があるんだな。ワシの歌に、

 世の中は捨足代木のたけくだべ

      それこれ共に 長し短し

と詠んだものがあるが、これは誠になげかわしいと思ったからなんだ。

 神道は開国の道であり、儒学は治国の道、仏教は治心の道だ。

 だからワシは、むずかしい理屈は避け、通俗的な表現はいとわず、この三道の正味だけを取ることにしたのさ。ここで正味というのは、人間社会にきわめて大事なことがらということで、大事なことだけをとり、そうでないものは捨てて、人間社会で最上の教えというものをつくり上げたんだよ。それがワシの「報徳教」なんだ。たわむれに名付けて「神儒仏正味一粒丸」という。

 その効能の広大なことは数えきれないほどで、国に用いれば国の病が、家に用いると家の病が治ってします。そのほか荒れ地が多くて困っている者が飲むと開拓が成功し、借金が多く困っている者が用いれば返済でき、資本がなくて悩んでいる者が飲むと資本が手に入り、家がなくて困っている者が飲めば家を得る。農具がなくて弱っている者が飲めば農具が手に入る。そのほか貧乏病、ぜいたく病、身持ちの悪い者、ごろつき病、なまけ病など、飲めば必ず治るのさ。

 下館藩の衣笠兵太夫が神儒仏三味の分量について質問してきたので、ワシは神道が一サジで儒仏はそれぞれ半サジずつだと言ってやった。すると、ある者がそばから、これを図解にすると、となりますかと聞くので、ワシは思わず笑って答えてやった。

 「世の中にはこんな寄せもののような丸薬があるもんか。丸薬といえば、よくまぜ合わせて、原料が何が少しもわからないようになっていなければ、口に入れても舌にさわり、腹の中に、入っても具合が悪いよ。よく混ぜ合わせて、何でつくったのかわからないようにすることが必要さ。アッハッハ・・・」。(二三一)

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二宮翁は、神道、儒教、仏教それぞれの長所と短所を見極め、「神儒仏正味一粒丸」という言葉で、自らの教えを表現した。

神道は国を開く道、儒教は国を治める道、仏教は心を治める道。どれか一つでは偏りが生じる。だからこそ、それぞれの「正味」、つまり人間社会に本当に必要な部分だけを取り出し、混ぜ合わせたと翁は言う。

経営においても同じだと感じる。理念、戦略、そして心の在り方。そのどれかに偏ると、会社も人も不安定になる。だからこそ、それぞれの本質を学び、実践の中で溶け合わせ、どこから見ても自然で、なおかつ強い「一粒丸」をつくり上げる。報徳教とは、経営にも人生にも、そのまま通じる智慧なのだろう。

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