二宮金次郎

第四十六夜 双方に利のある方法をとる

二宮尊徳 2025/07/04公開

 ある村に名主が横領したというので、村中の者が寄り集まって口の達者な者に頼んで訴え出ようと騒ぎだした。  ワシはその村のおもだった者、二、三を呼んで「どのくらい横領したのか」とたずねてみたんだ。  「 ・・・

第四十五夜 貸借も相手の立場で考える

二宮尊徳 2025/07/03公開

 「私は借金が千円あるんですが、貸し金も千円あります。どうしたらいいでしょう」という者があったので、ワシはこう答えてやった。  「これは大変おもしろいことだ。あんたが借り方に向かって言う気持ちで貸して ・・・

第四十四夜 原因も結果も大事

二宮尊徳 2025/07/01公開

 仏教では悟道という。これはなかなか面白い考え方だが、一面、人道を害することがあるんだな。  それはたとえば、生者必滅(生きてるものは必ず死ぬ)、会者定離(会えば必ず別れる)というように、その本源を表 ・・・

第四十三夜 自我を捨て道理を悟る

二宮尊徳 2025/06/30公開

 心が狭く、ちぢこまっていると真の道理を見抜くことはできないんだ。  世界は広いから心もつねに広くもたねばいけないな。しかしその広い世界も、おのれといい、我というものをその中に置いて見るようになると、 ・・・

第四十二夜 客観的にものごとを観る

二宮尊徳 2025/06/28公開

世の中には、もともと吉凶、禍福、苦楽、生滅という区別はない。このことは、ワシが示した一円図(因果循環をあらわす丸の字)のようなもんだな。  それなのに、現実に吉凶禍福などがあるのは、中間におのれを置い ・・・

第四十一夜 立場によって考えが違う

二宮尊徳 2025/06/27公開

人から見て、最も清浄だと思っている米も、その米の立ちから見れば糞尿こそ最上無類にいいものと思っていることだろう。これもまた循環の理によるものなんだよ。(一五四) 人から見れば、米は最も清らかな食物であ ・・・

第四十話 増と減

二宮尊徳 2025/06/26公開

「増えた」「減った」と、世の中は日々の数字の浮き沈みに一喜一憂する。しかしそれは、器に入れた水が傾きによって片方に集まるようなもので、全体を見れば、実のところ何も増えてはいない。 二宮翁は、こうした見 ・・・

第三十九夜 諸行無常とは

二宮尊徳 2025/06/24公開

仏教では「諸行無常」ということをいうね。  この世で行われるすべてのものはみな常なきものだ。それを常にあるものだと見るのは迷いなんだぞ。  お前たちの命やからだも皆そうだ。長短、遅速はあるかもしれない ・・・

第三十八夜 有無の世界

二宮尊徳 2025/06/23公開

芭蕉の句に    古池や蛙とびこむ水のおと  というのがあるが、この句の「おと」というのは、ただの音と聞いてはいかんよ。  この音は、有の世界から無の世界に入るときの音と悟るべきなんだ。木が折れるとき ・・・