二宮翁夜話

第三十四夜 善と悪

二宮尊徳 2025/06/16公開

善悪の理屈ははなはだむずかしいもんだ。がんらいは、善と悪というのはないんだよ。  善をいうから他方に悪というのができてくるんだ。善悪は人間の考えからできたもんで、人道上のもんなんだ。だから人間がいなけ ・・・

第三十三夜 円の字

二宮尊徳 2025/06/13公開

九の字に点を一つ加えて丸の字をつくったのは面白いな。〇というのは、つまり十なんだ。十はとりもなおさず一ということになる。  元旦やうしろに近き大晦日 というワシのつくった俳句があるが、これも十はつまり ・・・

第三十一夜 貧富の道理

二宮尊徳 2025/06/08公開

火を制するのは水。陽を保つものは影。世に富者があるのは他方に貧者がいるからだ。  この貧富の道理は、ようするに寒暑、昼夜、水火、男女などみな相手方とお互いに力を合わせ、もち合って受け継いでいくのと同じ ・・・

第二十九夜 草の彼岸

二宮尊徳 2025/06/03公開

 彼岸という文字は「梧窓漫筆」(太田元貞著、学芸道徳に関する随筆集)という本によれば、もとは儒書から出たもんだと書いてある、という学者がいたのでワシはこう言ってやったんだよ。  「文字の出所はよく知ら ・・・

第二十八夜 一草から万里を解く

二宮尊徳 2025/06/02公開

 この世のすべてのことは、みんな一つの道理によって貫かれてるんだ。一つに草を例にひいてこの道理を説明してみよう。  儒教の書物(中庸)に「この本は、はじめは一つの道理について説明し、中ごろでは広く各方 ・・・

第二十七夜 家格や富は祖先のお蔭

二宮尊徳 2025/06/01公開

 下館候(下館藩主、いまの茨城県下館)の宝物倉が火事となり、大切な宝物の天国の剣が焼けてしまった。  役人が城下の富商中村という者に「こんなに焼けてしまったが当家第一の宝物なのでよく研いで白鞘にして倉 ・・・

第二十六夜 輪廻盛衰は父富み子貧し

二宮尊徳 2025/05/31公開

訪れてきた者に、ワシが「誰それの家は無事にやっているかね」とたずねたら、その者が言うに、「あの人の父親は家業に精を出し、村でも一番の働き者だったんで、儲けも多く、豊かな暮らしぶりだったが、その子は、と ・・・

第二十五夜 貧富は過去の勤惰が原因

二宮尊徳 2025/05/30公開

貧乏になったり、金持ちになったりするのは偶然のことではないんだ。  金持ちも金持ちになる原因があり、貧乏も貧乏になる原因というものがあるんだな。人々は財貨というものは自然に富者のところに集まるものだと ・・・