二宮金次郎

第三十六夜 大学は二網領

二宮尊徳 2025/06/20公開

 学者はみな『大学』は三網領というけれど、前にも話したように、(第三十五夜)、至善に止まるの「至善」というものがどんなものか明らかでないのだから、実は二網領とすべきではないか、と考えたんだ。  なぜな ・・・

第三十五夜 善悪の基準

二宮尊徳 2025/06/19公開

儒教では「至善に止まる」(善の極致に達し、そこを離れない)といい、仏教では「衆善奉行」(いろいろな善を行う)という。  しかしその善というものが、いったいどうゆうものか確かでないから、人々は善を行おう ・・・

第三十四夜 善と悪

二宮尊徳 2025/06/16公開

善悪の理屈ははなはだむずかしいもんだ。がんらいは、善と悪というのはないんだよ。  善をいうから他方に悪というのができてくるんだ。善悪は人間の考えからできたもんで、人道上のもんなんだ。だから人間がいなけ ・・・

第三十三夜 円の字

二宮尊徳 2025/06/13公開

九の字に点を一つ加えて丸の字をつくったのは面白いな。〇というのは、つまり十なんだ。十はとりもなおさず一ということになる。  元旦やうしろに近き大晦日 というワシのつくった俳句があるが、これも十はつまり ・・・

第三十一夜 貧富の道理

二宮尊徳 2025/06/08公開

火を制するのは水。陽を保つものは影。世に富者があるのは他方に貧者がいるからだ。  この貧富の道理は、ようするに寒暑、昼夜、水火、男女などみな相手方とお互いに力を合わせ、もち合って受け継いでいくのと同じ ・・・

第二十九夜 草の彼岸

二宮尊徳 2025/06/03公開

 彼岸という文字は「梧窓漫筆」(太田元貞著、学芸道徳に関する随筆集)という本によれば、もとは儒書から出たもんだと書いてある、という学者がいたのでワシはこう言ってやったんだよ。  「文字の出所はよく知ら ・・・

第二十八夜 一草から万里を解く

二宮尊徳 2025/06/02公開

 この世のすべてのことは、みんな一つの道理によって貫かれてるんだ。一つに草を例にひいてこの道理を説明してみよう。  儒教の書物(中庸)に「この本は、はじめは一つの道理について説明し、中ごろでは広く各方 ・・・